徹夜作業をした場合の残業代は?
- 徹夜作業を行った従業員に支払う残業代の計算は、どのように行ったらよいのでしょうか?
- 徹徹夜作業など、継続勤務が2暦日にわたる場合でも、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の1日の労働となります。
- 労基法上の労働時間の取り扱い
- 事例詳細
労基法上の労働時間の取り扱い
- 継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも、1勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の(1日)の労働とすること(昭和63.1.1 基発1)
- ただし、翌日の始業時刻までの時間が、前日からの勤務時間として取り扱われます。
事例詳細
当社は、システム開発を主とした中小企業です。
通常は、ほぼ残業は発生しないのですが、今月は一度だけ、Aさんのミスにより顧客先でトラブルが起こり、Aさん1人で徹夜の修復作業となりました。
当社の始業時刻は8時00分、終業時刻は17時00分ですが、修復作業は翌日の正午まで及びました。
そして会社は作業が終わった時点で、Aさんからの要望があったため帰宅の許可を出しました。
その後の給料日のことです。
部長、この前の徹夜残業なんですが、こんなに長い時間残業させていいもんなんでしょうか?
君のミスから発生したことじゃないか。それに36協定では、この通り、1日の延長できる時間について15時間として締結しているから法律上は問題ないよ。
そうなんですか!? でも部長、私が徹夜をした日は、朝8時から次の日の昼の12時まで働きました。昼休憩の1時間を差し引いて、19時間は残業していることになります。しかし給与明細には、残業時間が15時間分しかカウントされていないんです。なので残りの4時間分を支払ってください。
徹夜残業の労働時間はどこで区切るのか?
さて、上記のように労働時間が2暦日に及んだ場合、労働時間はどのように取り扱われるのでしょうか。
労基法上の1日とは午前0時から午後12時(24時)までの暦日のことをいいます。
しかし、前日からの時間外労働が午後12時を超えて翌日に及んだ場合は、以下のように取り扱います。
継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも、1勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の(1日)の労働とすること」
昭和63.1.1 基発1
したがって、午後12時以降の労働時間についても前日から引き続く時間外労働として、割増賃金の対象となります。
ただし、翌日の労働を全て前日の勤務とするのではなく、翌日の始業時刻までの時間が、前日からの勤務時間として取り扱われます。
よって、翌日の始業時刻までの超過時間に対し割増賃金を支払えばよく、始業時刻以降は、通常の所定労働に対する賃金を支払えばよいことになります。
時間外労働の割増賃金の対象は?
以上のことから、Aさんの時間外労働については、前日の終業時刻後(17時00分)から翌日の始業時刻(8時00分)までが割増賃金の支払いが必要な時間となります。
そのため、計算上15時間というカウントは正しいことになります(午後10時から午前5時までの時間帯の労働に対しては、別途深夜割増賃金の支払いも必要です)。
そしてAさんが主張する4時間分の労働時間は、翌日午前8時から午前12時間までの通常の賃金を支払っていれば問題ありません。
始業・終業時刻の繰り上げによる対応
今回の取り扱いとは異なりますが、このように労働時間が2暦日に及ぶ場合には、始業時刻の繰り上げで対応することも考えられます。
業務上の必要性があり、翌日までの時間外労働があらかじめ想定される場合には、就業規則に、「始業・終業時刻の繰り上げを行うことがある」という旨を定めることで、当日の始業時刻を午前0時まで繰り上げることができます。
もちろん、事前に繰り上げを当該労働者に通知しておく必要はあります。
午前0時まで始業時刻が繰り上げられた場合、前日からの労働は、翌日に引き続くものとはならず、午前0時以降は翌日の就業が開始されることになり、所定労働時間内で就業した場合は、時間外手当の支払いを免れることになります(午前0時から午前5時までの時間帯の労働に対しては、別途深夜割増賃金の支払いが必要になります)。
しかし、いずれにせよ長時間労働であることに変わりはありませんので、労働者の健康面について、十分に配慮することが大切です。
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