新型コロナウイルスと36協定について

想定していなかった新型コロナウイルスような事態でも、一度締結した36協定を変更することはできないのでしょうか?
原則、36協定の限度時間と特別条項の月数の上限は厳格に適用すべきものですが、新型コロナウイルスの影響により、現在は、特別条項を付け加えるか、特別条項を設けた協定を締結し直すことができるとされています。
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このコンテンツの目次
  • 労基法の時間外労働と新型コロナ対応
  • 事例詳細

労基法の時間外労働と新型コロナ対応

  • 労基法(36協定)では、原則として、日毎・週毎に、1日8時間・1週40時間を超えた時間が時間外労働となる
  • 36協定の限度時間と特別条項の月数の上限は厳格に適用すべきものだが、新型コロナ対応で、特別条項を付け加えるか、特別条項を設けた協定を締結し直すことができる

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事例詳細

ある日、北大塚商事の総務部長は、パソコンの画面を見て、難しい顔をしていました。

社長

総務部長、お疲れさま。なにやら難しい顔をしているが、どうかしたのかね?

総務部長

社長、お疲れさまです。当社のスーパー部門で、売上面にはさほど新型コロナウイルスの影響がないのですが、学校が休校になったりしたため、子どもがいる社員やパートさんが出社できなくなったり、家族が感染したなどの社員もいたという事情で、一部の社員やパートさんの時間外労働が長くなっているんです。

社長

こんな事態だからなあ。それで、彼らの時間外労働はどの程度長いのかね?

総務部長

社長が音頭を取ってくださった働き方改革のお陰で、残業時間を削減してきていたのですが、3月ぐらいから36協定の限度時間である1ヶ月45時間を超えそうな社員が数名ずつ出てきており、だんだん数も増えてきて、先月は12名になっています。

社長

コロナの前は残業時間が削減できてたよな。そもそも、その36協定っていうのは、どんな内容を決めたものだったかな?

総務部長

そもそも1日8時間、1週40時間を超えて働かせるのは禁止されていて罰則もありますが、実際はその時間を超えて働くこともあります。そのため、何時間まで働かせていいかについて、従業員代表と協定を締結して届け出れば罰を与えないことになっています。休日も同様に、週1日は与えないといけないため、その休日に働いてもらうためには36協定を締結しないといけないのです。

社長

なるほど。そうすると、わが社の残業時間は1ヶ月45時間近くということだったけれど、限度時間を超えて働いている社員がいたら、どうなってしまうのかね?

総務部長

法律上は、違反者1人につき、6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金という罰則を受けてしまいます。

社長

そんなこといったって、すぐに罰則にはならないだろう? それに、その罰は私が受けるのかね?

総務部長

確かに通常は、まずは行政指導を受けることになりますが、時間外労働については、最近送検事例が増えているそうで・・・。送検されるとしたら、社長と私、もしかしたら店長もです。ただ、懲役の方は刑法第47条があるので12人×6ヶ月とはならないのですが・・・。

社長

た、大変なことじゃないか! 早く対策を立てて45時間以下にしなさい!!

さて総務部長はどうすればいいのでしょうか?

新型コロナウイルスで新しい通達が公表されています

原則、36協定について、平成31年4月時点では「1年についての限度時間(原則として360時間)及び特別条項により月45時間を超えて労働させることができる月数の上限は厳格に適用すべきもの」とされており、いったん締結、届け出した協定に記載した起算日、および対象期間は、一部の例外を除き原則として変更できないとされています。

しかしその後、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い出された通達では、以下のように述べられています。

今般の新型コロナウイルス感染症の状況については、36協定の締結当時には想定し得ないものであると考えられるため、例えば、36協定の「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」に、繁忙の理由が新型コロナウイルス感染症とするものであることが明記されていなくとも、一般的には、特別条項の理由として認められるものであること。なお、現在、特別条項を締結していない事業場においても、法定の手続を踏まえて労使の合意を行うことにより、特別条項付きの36協定を締結することが可能である。

また平成31年のQ&Aでは、対象期間を変更する場合でも従前の協定に基づく1年の上限時間は再締結後でも遵守する必要があるとされていたのですが、この部分は新型コロナウイルスの影響による再締結には適用されません(厚労省監督課に確認済み)。

よって、北大塚商事の総務部長は、残業時間を減らすよう効率性向上等の施策を立案・実施する以外に、36協定を再締結し、労基署に届け出る方法を採ることができます。

また、36協定を再締結する場合は、従前の協定の起算日と対象期間をもとに特別条項を付け加える方法と、新たに起算日と対象期間を設定し直した上で、特別条項を設けた協定を締結し直す方法のどちらかを選択することができるということになります。

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