病者の就業禁止と就労請求権

病気の疑いのある従業員や、すでに発症している従業員に対し、会社が休みを命じた場合、その間の賃金はどうなるのでしょうか?
賃金(休業手当)支払義務が発生しないケースは、法令上その従業員の就業を禁止させなければならない場合に限られます。
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このコンテンツの目次
  • 病者の就業禁止
  • 実務上の留意点
  • 事例詳細

病者の就業禁止

  • 労働安全衛生法施行規則第61条によると、「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者については、その就業を禁止しなければならない。ただし、伝染予防の措置をした場合は、この限りでない。」
  • ただし、感染症法に該当する感染症であれば、労働安全衛生法上の就業禁止ではなく、感染症法上の規定に委ねられる
  • 国による措置を超えて、会社が独自に休みを命じた場合には、賃金(休業手当)の支払義務は発生する

実務上の留意点

  • 十分な労務提供ができなかったり、他の従業員への感染の恐れもあることから、労務提供の受領を拒否することは可能
  • スムーズに休業させるためにも、事前に就業規則に規定しておくことが適切

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事例詳細

当社は都内にある従業員規模30名ほどのIT企業です。

オフィスビルの6階にあり、従業員全員が、ワンフロアで仕事をしています。外回りの仕事は、ほとんどありません。

そのため、誰かが風邪や感染症等にかかると、すぐ広がってしまうため、従業員には体調管理をしっかりし、予防対策をするよう度々声をかけています。

しかし、このような冬の寒い季節になると、予防対策をしていたとしても、風邪や感染症等にかかってしまう者もでてきます。

その場合、当社は、年次有給休暇の申請を促し、該当する従業員が治療に専念し、他の従業員に風邪や感染症等が広がらないように対応しています。

部長

A君、ここ数日、どうも顔色が悪いようだけど大丈夫か? どこか具合が悪いんじゃないのか?

A社員

実は、先週病院にいくと、ノロウイルスにかかっていると医者からいわれました。

部長

なんだってーっ!? 熱は? 大丈夫か? じゃあ、もう仕事はいいから、早く帰りなさい。

A社員

いえ、もう治りかけですし、大丈夫です。片付けないといけない仕事を残して帰れませんから。

部長

大丈夫じゃない。君がよくても、他の従業員に広がる可能性もあるし、ここ数日、君は仕事もろくに手がついていないじゃないか。完治するまで休みを取りなさい。

A社員

休みは取りません。部長、僕は有給休暇が残っていません。休んで欠勤控除されるくらいなら、頑張って仕事します。もし、それが駄目というのなら、それは会社の都合ですから、休業手当を支払ってください。

就業禁止にした場合の賃金の取り扱いは?

病気の疑いのある従業員や、すでに発症している従業員に対し、会社が休みを命じた場合、その間の賃金はどうなるのでしょうか?

病気に罹患した従業員を休ませた場合に賃金(休業手当)支払義務が発生しないケースは、法令上その従業員の就業を禁止させなければならない場合に限られます。

労働安全衛生法施行規則第61条には「病者の就業禁止」という条文があり、これによれば、「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者については、その就業を禁止しなければならない」という規定があります。

また、「伝染予防の措置を講じた場合は、この限りではない」とも規定されています。

感染症

これは行政解釈によると、「法定伝染病については、伝染病予防法 (現在は感染症法)によって予防の措置がとられるから本号の対象とならない」とされていることから、(昭24・2・10基発第158号、昭33・2・13基発第90号)感染症法に該当する感染症であれば、労働安全衛生法上の就業禁止とは取り扱わず、感染症法上の規定に委ねるということを意味しています。

現在ノロウイルスは「感染性胃腸炎」の一部として扱われており、感染症法上の五類感染症に位置づけられているため、労働安全衛生法上の就業禁止の条項は適用できないことになります。

一方、感染症法では、感染症を一類感染症~五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、および新感染症の区分に分類しており、一類感染症~三類感染症、および新型インフルエンザ等感染症に罹患した場合には、国が入院勧告や就業制限といった措置を取ることができるとされています。

ここでも、ノロウイルスは五類感染症に位置づけられていることから、通常は就業制限の措置が取られることはありません。

よって、国が講じていない措置を超えて、会社が独自に休みを命じた場合には、賃金(休業手当)の支払義務は発生することになります。

実際の対応としては・・・

実際、従業員が、風邪や感染症等にかかった場合は、自主的に欠勤することの方が多いかと思います。

しかし上記のケースや、無理をしてでも出社しようとするケース等も想定されます。

そういった場合、労働者に就労請求権はありませんし、十分な労務提供ができなかったり、他の従業員への感染の恐れもあることから、労務提供の受領を拒否することは可能です。

休業手当の問題は残りますが、スムーズに休業させるためにも、事前に就業規則に規定しておくことが、労務管理上適切だと考えます。

欠勤・遅刻・早退などについて正しく定めておかないと、不要なトラブルに発展する可能性があります。
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