ストライキ参加時の年次有給休暇の取り扱いは?
- ストライキに参加した社員が年次有給休暇の取得を申し出た場合、年次有給休暇を与えなければならないのでしょうか?
- 他社のストライキへの参加の場合は年次有給休暇を与えなければならないですが、自社のストライキの場合は与えなくてもよいでしょう。
- 年次有給休暇の性質
- 年休で自社のストライキに参加する場合
- 事例詳細
年次有給休暇の性質
- 使用者(会社)の承諾や許可といった行為は基本的には必要がない
- 休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由
年休で自社のストライキに参加する場合
- ストライキとは労働組合がその要求を貫徹するために集団的に労務の提供を拒否して、業務の正常な運営を阻害すること
- 業務を運営するための正常な勤務体制が整っていることを前提に休むことを認めるという年次有給休暇の趣旨に反する
事例詳細
他社か自社かによっても取り扱いが違う
ストライキに参加した社員が年次有給休暇の取得を申し出た場合、年次有給休暇を与えなければならないかどうかは、他社のストライキに応援にいったのか、自社のストライキに参加したのかによって異なります。
まず、年次有給休暇の法的な性格についてですが、昭和48年3月2日に白石営林署事件で最高裁判決が示され、以降この考え方に沿った解釈がとられてきています。
労基法は、・・・「請求」という語を用いているが、年次有給休暇の権利は、前述のように、同条一、二項の要件を充足させることによって法律上当然に労働者に生ずる権利であって、労働者の請求をまって始めて生ずるものではなく、また同条三項にいう、「請求」とは、休暇の時期にのみかかる文言であって、その趣旨は、休暇の時季の「指定」にほかならないものと解すべきである・・・。白石営林署事件 昭和48年3月2日
年次有給休暇をどのように利用するかは自由
つまり、年次有給休暇の権利は法の所定の要件を満たせば当然労働者に発生し、あとは「いつ休む」という時季を指定すれば足り、使用者(会社)の承諾や許可といった行為は基本的には必要がないことになります(特別な場合、使用者(会社)に時季変更権が認められる場合があります)。
また、その利用目的も「年休の利用目的は労働法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である。」とされているのです。
そうであれば、年次有給休暇を使って他社のストライキの応援に行こうが、自社のストライキに参加しようが、労働者の自由で会社は認めるしかないと思われるかもしれません。実際のところ、他社のストライキに参加することについて裁判所は年次有給休暇利用を否定していません。
しかし、裁判所は自社のストライキに年次有給休暇を取得して参加する場合はそのようには考えていません。
ストライキとは労働組合がその要求を貫徹するために集団的に労務の提供を拒否して、業務の正常な運営を阻害するという一種の加害行為であって同じく休むといっても年次有給休暇とは性格上相容れないものと考えるべきものであると裁判所は判断しているのです。
自社のストライキに年次有給休暇はあり得ない
つまり、賃金が保障される年次有給休暇であって同時にストライキでもあるということは法律的にありえないという判断なのです。
このことは、組合員である従業員が事前に年次有給休暇の利用を会社に申し出ていて、その後にたまたま組合が組合総会で当該組合員の年次有給休暇申請日を含む日程でストライキの決行を決める等しても、事情に変更はありません。
実際に、このような事件を扱った裁判例としては、国鉄津田沼電車区事件(最三小判 平3.11.19)があります。
年次有給休暇を申請して認められたが、その後、偶然にも、所属の職場でストライキが行われ、年次有給休暇を取っていた労働者がそのストライキに参加した場合、最高裁判所は、おおよそ次のように述べて、年次有給休暇は成立しないと判断しています。
労働者がたまたま先に取得した年次有給休暇を会社が認めているのをいいことに、年次有給休暇をそのまま取得し続け、所属する職場の正常な業務の運営を阻害する目的をもってストライキに参加したことは、業務を運営するための正常な勤務体制が整っていることを前提に休むことを認める、という年次有給休暇の趣旨に反するので認められない。国鉄津田沼電車区事件(最三小判 平3.11.19)
当然の結論だと思います。やはり、労働者に都合のいいことばかりが認められるわけではありませんね。
ただし、自社のストライキという事例以外は、年次有給休暇の利用目的は、労働者の自由であることが原則ですので、就業規則に取得目的を制限する規定などを設けないよう、注意しましょう。
年次有給休暇について正しく定めておかないと、不要なトラブルに発展する可能性があります。
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