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就業規則に関するQ&Aを多数紹介いたします。下表のカテゴリーから選択してご利用ください。

改正労働基準法レポート
就業規則講座のカテゴリー
作成・手続 構成・総則 採用・試用 人事制度
退職・解雇 服務規律 労働時間 休日
有給休暇 賃金 安全衛生 懲戒・賠償

1.就業規則はなぜ必要?

1)企業秩序を維持する

人々は、さまざまな価値観を持っています。
もちろん、それら個人の価値観は、尊重されるべきものです。
しかし、こと会社という場では、人々はある程度、集団で行動することが求められます。

会社を経営していくには、事業を継続して収益を上げ続けなければなりません。
そのために、集団の労務提供と企業秩序が必要なのです。
それを維持するためのルールとして役立つのが、就業規則です。

2)労働条件を統一的・画一的に設定する

会社経営においては、労働者を雇用する場面が生じます。
書類や面接などを通じて採用し、労働者の働きに対して給与を支払います。
このように、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを合意する契約が、労働契約です。
この労働契約は、通常の民事契約と同様、合意が原則です。

一方で、日本の雇用社会は、年功主義人事制度や新卒一括採用により形成されてきました。
使用者は、多数の労働者を組織として効率的に活用する必要がありました。
こうして、使用者が就業規則を一方的に作成し、労働条件を統一的かつ画一的に設定することが認められたのです。
それにより、会社は、事業を効率的に経営することができたのです。

3)労働者を公平に処遇する

合意が原則である労働契約において、就業規則を定めるということは、どのような意味をもつのでしょうか。

民事契約のひとつである労働契約も、使用者と労働者が対等な関係で結ぶものです。
しかし、現実には、使用者と労働者は、明らかに対等ではありません。
そのアンバランスを少しでも解消するために定められたのが、労働基準法です。
労働基準法は、刑罰をもって、最低労働条件を守るよう使用者に求めています。

就業規則と労働条件の関係については、労働基準法第93条から移設された労働契約法第12条に、労働契約と労働条件の関係については、労働基準法第13条に定められています。

労働契約法第12条は、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」としています。
これは、就業規則で定める内容は、当該事業場において最低労働条件となるということです。

また、労働基準法第13条は、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」としています。

つまり、労働基準法が定める労働条件を下回る労働契約は、労働基準法第13条により無効になり、労働基準法に定めがある場合にはその内容まで引き上げられます。
さらに、就業規則が定める当該事業場の労働条件を下回る労働契約は、労働契約法第12条により無効になり、当該就業規則が定める内容まで引き上げられます。

このように、就業規則を定めるということは、それが最低労働条件となることで、一人ひとりの労働者の労働条件を相対的に高めるという意味をもつのです。

こうして就業規則は、集団の中で各労働者を公平に処遇するための基準として機能します。


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2.就業規則に何を書く?

1)就業規則の構成

就業規則をどのように構成していくかについて、法令等にはとくに定めがありません。
ちなみに、竹内社労士事務所の就業規則は、以下のような構成です。

第1章
総則
第2章
採用
第3章
人事制度
第4章
服務規律
第5章
就業
第6章
休暇
第7章
出張
第8章
賃金・退職金
第9章
安全衛生
第10章
災害補償
第11章
教育訓練
第12章
表彰および懲戒
第13章
雑則

これらは大まかに、総則、業務命令権・人事権、服務規律・懲戒、労働条件に分けられます。

2)労働基準法に定められた記載事項

上記のような構成で、就業規則を作成していきますが、一体どんな内容を書けばよいのでしょうか。
就業規則に記載する事項については、労働基準法第89条に定められています。

1つ目は、必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」です。

<絶対的必要記載事項>
  • 始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、就業時転換について
  • 臨時の賃金等を除く賃金の決定、計算および支払方法、賃金の締切りおよび支払時期、昇給について
  • 解雇の事由を含む、退職について

2つ目は、制度として実施する場合には記載しなければならない「相対的必要記載事項」です。

<相対的必要記載事項>
  • 退職手当が適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払の方法、退職手当の支払の時期
  • 退職手当を除く臨時の賃金等および最低賃金額
  • 食費、作業用品その他の負担
  • 安全および衛生
  • 職業訓練
  • 災害補償および業務外の傷病扶助
  • 表彰および制裁の種類および程度
  • その他、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

そして3つ目が、使用者が任意に記載することができる「任意記載事項」です。

3)行動規範として服務規律を定める

会社は、事業を経営し、企業秩序維持するため、従業員にどのように行動して欲しいかを考えます。
それを記載するのが、就業規則なのです。

これらの会社の理念や方針をもっとも反映させるべきは、「服務規律」であるといえるでしょう。
具体的には、従業員の就業の仕方や、職場のあり方、企業財産の管理・保全、従業員としての地位・身分などを定めます。

こうして服務規律は、従業員の行動規範となることはもちろん、企業秩序を乱した者を懲戒するための規定となるのです。

4)労働契約の内容をシンプルに書く

「就業規則に記載した内容は、労働契約の内容となる」ということに、十分注意してください。
とくに近年、長期雇用が保障されなくなり、信頼関係よりも労働契約という「約束」が重視される傾向にあります。

したがって、就業規則に何を記載するかについては、慎重に検討するべきでしょう。

たとえば、ある事項が絶対的必要記載事項なのか、相対的必要記載事項なのか、任意記載事項なのか、あるいは、法改正があったとき、それが使用者の義務なのか努力義務なのかを見分ける必要があります。

労働者との間で守られる約束事をシンプルに書き、かつ、会社の裁量を制限するような書き方はしてはならないのです。

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3.就業規則はどうつくる?

1)就業規則作成・届出の手続き

就業規則の作成・届出は、「作成→意見聴取→届出→周知」の流れで行います。

まず、どのような事業場で就業規則を作成しなければならないのか確認しましょう。
就業規則は、「常時10人以上の労働者を使用する」事業場で作成しなければならないものです。
「常時10人以上の労働者を使用する」とは、一時的に10人未満になることはあっても、「常態として」10人以上の労働者を使用していることをいいます。

「常時10人」には、異なる雇用形態の労働者も合わせて数えます。
したがって、正社員だけでなくパートや契約社員も数えますが、派遣労働者は派遣元で数えるため、当該事業場の「常時10人」には含みません。

就業規則を作成(または変更)したら、労働者の意見を聴かなければなりません。
意見聴取の相手は、過半数労働組合か、過半数労働組合がなければ過半数を代表する者です。
「意見を聴く」とは、同意を得ることや協議をすることではありません。
「十分に陳述する機会と時間的余裕を与える」ことと考えてください。

意見聴取を終えたら、事業場を管轄する労働基準監督署に、意見書を添付して就業規則を届け出ます。

そして最後に、作成(または変更)した就業規則は、労働者全員が常時閲覧できるようにしておいたり、配布したりすることで周知します。

2)就業規則を見直し、変更するとき

昨今の変化が激しい世の中で会社を経営するためには、労働条件を変更せざるを得ない状況が起きるでしょう。
労働条件の変更は、原則、労働者との合意によって行われます。
しかし、労働条件を、労働者の不利益に変更する際には、注意が必要です。
労働条件を不利益に変更するわけですから、労働者の合意を得られるとは限らないでしょう。

この場合、その就業規則の不利益な変更を労働者に周知させ、かつ、その変更が、以下に照らして合理的なものと認められたときは、その労働条件は当該変更後の就業規則に定めるところによるとされます。

  • 労働者の受ける不利益の程度
  • 労働条件の変更の必要性
  • 変更後の就業規則の内容の相当性
  • 労働組合等との交渉の状況
  • その他の就業規則の変更に係る事情

変更した就業規則は、1)の手続きの流れに乗ります。
ただし、とくに賃金や退職金などの重要な労働条件を変更する際は、個別に労働者の同意を得る方がよいと考えます。
労働者との信頼関係維持が不可欠であることは、いうまでもありません。

3)就業規則が本領を発揮するには?

通常の会社経営において、就業規則は、労働条件や行動規範として機能します。

しかし、残念ながら、就業規則がもっとも力を発揮するのは、労働者と争いになったときです。
このようなトラブルは、いくら防ごうとしても、起きるときは起きてしまいます。
労働者と争いになれば、就業規則の記載の仕方いかんで、その争いの程度や結末が変わってしまうこともあります。

やはり、真に「会社を守る就業規則」を備えておくためには、弁護士や社労士といった、専門家と一緒に作成することがオススメです。

客観的な立場でのヒアリングにより、法律はもちろん、一般的な傾向や他社の事例なども交えて検討し、就業規則を作成・改良することができると思います。

専門家は、経営側で就業規則を作成してきたという実績がある人を選ぶとよいでしょう。


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