元従業員に損害賠償の請求は可能か?

業務中に事故を起こした従業員が遺族に支払った損害賠償額を、会社が負担するよう求められたら支払わなければならないのでしょうか?
従業員は損害賠償責任保険に自分で加入することはできず、重い損害賠償義務を負うのは著しく不利益であり不合理なため、会社の負担が認められる可能性があります。
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このコンテンツの目次
  • 事例詳細
  • 判例から見てみましょう

事例詳細

ある日、駒込商事の社長が総務部長に、

社長

やったぞ!やっと例の案件がとれたぞ!!

総務部長

あの3000万円の件ですか。

社長

そう、結構競合が値段を下げてきたので大変だったが、なんとかなった。ただ相談があるのだが、発注元から〇〇資格がある男性社員に従事させるという条件が出されたんだ。

総務部長

それ、受けたのでしょうか・・・、わが社にはその要件を満たす者はいませんが・・・。

社長

採用を頼む!

総務部長

えっ・・・わかりました!

こうして総務部長は、職業紹介事業者や知人のつてをたよりに必死で募集を続けた結果、Aさんを無事に雇用することができました。総務部長はほっとしましたが、採用後すぐに実務に従事させることに一抹の不安を覚え、Aさんにしつこく業務に従事できるかどうか尋ねたうえで、正社員として、かつ試用期間を設けず無期雇用する代わりに、業務を完遂できず会社に損害を与えた場合は200万円を限度に賠償する旨の誓約書を提出させることにしました。

さて、業務を開始する日の朝、Aさんは駒込商事との労働契約書と誓約書を提出し意気揚々と仕事に取り掛かりました。そのことを聞いた社長と総務部長は胸をなでおろしました。

しかし2、3日後、Aさんが体調不良を理由に会社を欠勤し始めました。そして入社から10日後に総務部長に対して辞表を提出してきました。総務部長は驚愕し、理由を確かめましたがAさんは体調不良を理由に退職するの一点ばりで、退職の意思表示を変えることはありませんでした。

総務部長は慌てて社長に報告するのと同時に善後策を講じましたが、新たな人員の補充も難しくついに3,000万円の案件を解約されてしまいました。

社長と総務部長は落ち込んでいましたが、営業職のBさんから、Aさんが欠勤期間中だった日に同業のX社で、X社の制服を着て働いているのを見たと報告してきました。それを聞いた社長は激怒し、「総務部長、顧問の弁護士先生に連絡してくれ、損害賠償請求をしてやる!」と言いだしましたが、果たして損害賠償請求は可能なのでしょうか。

判例から見てみましょう

ケイズインターナショナル事件 東京地判平4.9.30

 入社後1週間程度出勤したのち欠勤し始め、結局仕事を辞めてしまった元従業員に対し、元従業員と会社が退職後に取り交わしていた、元従業員が会社に対し損害賠償として200万円を払うという約束に基づき訴訟を起こしたところ、200万円のうち70万円が雇用契約上の債務不履行として損害賠償が認められたというものです。この判決を踏まえれば、駒込商事も損害賠償請求が可能であり、請求も認められる余地があるように思えます。
 しかしこの判決では、元従業員が会社から給与の支払いを受けていなかったこと、会社の労務管理に落ち度があったこと、会社の損害が多額ではなかったこと、従業員に損害賠償義務を負わせることは疑問がないではないとされた点は元従業員側に有利に働いたようですが、元従業員が自己の主張を十分にできなかったために出された判決であることに注意が必要です。

茨石事件 最一小判昭51.7.8

 従業員に損害の負担を求める場合、その事業の性格、規模、施設の状況、従業員の業務内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての会社の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、社員に対し損害の賠償又は求償の請求をすることが可能とされているため、損失のすべてを従業員に負わすことは妥当ではないこと。また、精神疾患にり患したことを理由に業務の引継ぎをせずに退職した従業員に対し、会社で得た収入の5倍にあたる損害賠償を請求したところ、元従業員から反訴され結果的に会社の主張が否定されました。

また、かえって100万円の慰謝料の支払いを会社に命じたケース(プロシード元従業員事件)もあるので、やはり慎重になるべきでしょう。

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