就業規則の変更に組合が反対?
- 会社に対立的な労働組合が、就業規則の意見書提出を拒否した場合、就業規則の変更は認められないのでしょうか?
- 基本的に、労働基準監督署長は、会社が意見を聴いたことを証明していれば、就業規則の届け出を受理します。
- 意見を聴く
- 重要な労働条件を変更するとき
- 事例詳細
意見を聴く
- 意見を聴いたことが客観的に証明できる限り、これを受理するよう取り扱われる
- 意見書の提出を拒否されても、反対意見を提出してきても、意見を聴いたことが証明されればよい
重要な労働条件を変更するとき
- 賃金制度や退職金制度の不利益な変更や廃止といった、重要な労働条件を変更する際は、原則として労働者の個別同意が必要となる
- 会社に労働組合がある場合は、組合と協議決定していくというプロセスが必要
事例詳細
就業規則を変更しようとしたところ、労働組合に反対され、「意見書」の提出を拒否されたが、どうしたらよいでしょうか?
先日、ある社長からこのような相談を受けました。就業規則の一部を変更しようとしましたが、この会社には会社と対立的な労働組合があり、事業場の従業員の過半数以上が組合員となっていました。
ご存知のように就業規則の作成・変更の際には、労働基準法第90条で「使用者は、就業規則の作成または変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない」とし、この意見を、作成もしくは変更した就業規則に書面で添付して所轄の労働基準監督署長に届け出ることを義務付けているのです。
ところが、この会社に対立的な労働組合の委員長は、就業規則の変更に反対で、意見書の提出を拒否しています。
このような場合は、就業規則の変更は認められないのでしょうか。
また、たとえ意見書が提出されたとしても、それが全面的に反対の意見であった場合でも、認められるのでしょうか、という相談でした。
どんな意見でも、基本的には受理される!
まず、結論をいえば、いずれの場合であっても、労働基準監督署長はその就業規則の届け出を受理します。そして、その内容が労働者の重要な労働条件の不利益変更にならない限り、周知さえすれば有効なものとなります。
つまり、故意に意見を表明しない場合や、あるいは意見書に署名押印しない場合でも、以下の通り、意見を聴いたことが証明できればそれでいいのです。
意見を聴いたことが客観的に証明できる限り、これを受理するよう取り扱われたい。昭和23・5・11 基発第735号、昭和23・10・30 基発第1575号
したがって、組合が意見書の提出を拒否してきた場合、会社は「○回にわたり、当社従業員の過半数を代表する労働組合に、意見書の提出を求めましたが、拒否をされたのでやむなく意見書の添付なしで就業規則の変更の届出をいたします。」旨の上申書と変更届を、変更した就業規則と共に労働基準監督署長に届け出ればいいのです。
また、変更について反対意見を提出してきた場合も、その反対意見の効力について以下のように述べられています。
「労働組合の意見を聴かなければならない」というのは労働組合との協議決定を要求するものではなく、当該就業規則についての労働組合の意見を聴けば労基法の違反とはならない趣旨である。昭25・3・15 基収第525号
つまり、これもどのような反対意見が表明されたとしても、意見を聴いたことが証明されればよく、組合の同意までは要件とされていないので、その効力は認められず、周知さえすれば就業規則の変更は有効となります。
重要な労働条件については注意が必要
ただし、既述のとおり、労働者にとって重要な労働条件の不利益な変更については、この対象ではありませんから注意が必要です。
例えば、賃金制度の不利益な変更であるとか、退職金制度の不利益な変更や廃止等です。これらの場合は、原則として労働者の個別同意が必要となりますが、会社に労働組合がある場合、組合員については、この組合と協議決定していくというプロセスが必要となってきます。
従業員のお金に関わることや、労働時間の延長に関することは、重要な労働条件と考えられることが多いので、労働組合があると厄介な問題となります。このような場合は、事前に専門家に相談されるほうがよいでしょう。
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