副業・兼業の労働時間通算と残業について
- 副業や兼業をしている労働者の時間外労働は、どのようにカウントすればよいのでしょうか?
- 労働者からの申告をベースに労働時間を通算します。そして、副業・兼業の開始前と開始後に区分して、所定労働時間と所定外労働時間をカウントします。
- 労働者からの申告により管理する
- 副業・兼業の開始前と開始後に区分する
- 事例詳細
労働者からの申告により管理する
- 自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とを通算して管理する必要がある
- 労働者からの申告等により、把握した労働時間によって通算していれば足りる
副業・兼業の開始前と開始後に区分する
- 副業・兼業の開始前には、自らの事業場と他の事業場の所定労働時間を通算して、法定労働時間を超える場合は時間的に後から労働契約を締結した使用者における事業場で割増賃金を支払う
- 副業・兼業の開始後には、上記の所定労働時間の通算に加えて、時間的に先に行った所定外労働時間から通算して、法定労働時間を超える部分が時間外労働に該当する
事例詳細
当社は、都内で広告業を営む30名程度の中小企業です。
毎年4月に36協定を締結しており、年々、行政の監督も厳しくなっていることから、今回、改めて労働時間の管理について確認することになりました。
部長、そろそろ36協定の更新時期だが、この1年、時間管理については特に問題なかったかね?
そうですね。当初は時間外労働の上限規制について、法律が改正されたこともあって、やきもきしましたが、大きな問題はありませんでした。あっ! でも一つだけありました。副業問題です。近年、副業を容認するような社会的背景から、今まで隠れて副業をしていた者が早朝に副業していたことを申し出て、当社での勤務の一部は、時間外労働に該当するといってきたんです。それにはさすがにヒヤッとしました。
なんだって!? 当社のルール上、許可なく副業を行うこと自体問題だが、まず時間外労働の取り扱いはどうなるんだ? 36協定の違反はないのか?
労働者からの申告がベースとなる
さて、副業・兼業の場合における労働時間通算の考え方について、令和2年9月1日、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改正され、労働基準法第38条1項における「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」の解釈等が示されました。(基発0901第3号 令2.9.1)
そして、当該通達によれば、労働時間の通算は、それぞれ自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とを通算して管理する必要があるとしつつも、労働者からの申告がなかった場合には、労働時間の通算は要せず、また、労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間の事実と異なっていた場合でも、労働者からの申告等により、把握した労働時間によって通算していれば足りるとされています。
したがって、今回のように、会社が知り得ない中で、別の会社で副業をしていたとしても、労働時間の通算はされず、36協定による限度時間についての影響はないことになります。
副業・兼業の開始前と開始後に区分して考える
一方、適切に労働時間の申告がなされた場合の労働時間の通算方法について、ガイドライン等では、「副業・兼業の開始前(所定労働時間の通算)」と「副業・兼業の開始後(所定外労働時間の通算)」に区分し示しています。
前者では、自らの事業場と、他の事業場の所定労働時間を通算して、その結果、法定労働時間を超える場合は時間的に後から労働契約を締結した使用者における事業場において、所定労働時間のうち、法定労働時間を超える部分が時間外労働に該当するとしています。
わかりにくいのですが、例えば、所定労働時間が、A社で7時間、B社で3時間とし、A社が先に労働契約を締結した場合、通算することにより、B社で法定労働時間(8時間)を超える部分が発生し、この場合超えた2時間については、時間外労働に該当することになります(原則的な労働時間制度の場合。以下同様)。
後者、つまり所定外労働の通算については、前者の所定労働時間の通算に加えて、時間的に先に行った所定外労働時間から通算して、法定労働時間を超える部分が時間外労働に該当するとしています。
例えば、所定労働時間が、A社で3時間、B社で3時間とし、A社・B社でそれぞれ2時間ずつ所定外労働した場合は、先に所定外労働を行った会社が、法定労働時間内の労働に収まることになり、後に行った会社の所定外労働は、法定労働時間を超えることになりますので、時間外労働に該当することになります。
使用者は、上記の方法により、把握した時間外労働時間を基に、36協定を遵守する必要があります。冒頭で部長が発言したように、副業・兼業は、原則容認されていく傾向にありますが、労務提供上の支障、企業秘密の漏洩、長時間労働を招くリスクだけでなく、時間管理について、どのように対応していくかといった問題も生じてきますので、慎重に検討していく必要があると考えます。
兼業や副業について正しく定めておかないと、不要なトラブルに発展する可能性があります。
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