管理監督者の遅刻や早退について欠勤控除はできますか?
- 遅刻や早退を繰り返す管理監督者に対して、欠勤控除はできるのでしょうか?
- 管理監督者は労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されないものの、就労の義務はあります。年休を取得せずに欠務した場合は、労務提供の義務を果たしていないため、ノーワーク・ノーペイの原則通り、欠勤控除を行うことが可能であると考えられます。
- 管理監督者とは
- 事例詳細
管理監督者とは
- 労基法41条2号は、「監督若しくは管理の地位にある者」(「管理監督者」とします)を「労働時間、休憩及び休日に関する規定を適用しない労働者」として規定しています。
- 管理監督者の要件としては、次の点を満たす者とされ、名称にとらわれず実態に即して判断されることになります。
- ① 事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること
② 自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
③ 一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金(基本給、手当、賞与)上の処遇が与えられていること
事例詳細
当社では昨年4月に、新たに営業本部を立ち上げたことに伴い、他社で営業実績のあるAさんを本部長として採用しました。それから間もなく1年が経とうとしていますが、特段成果は上がっておらず、今後の見込みも立っていない状況です。最近は部下の士気も低下しているようで、こうした時こそ本部長として一層奮起して頂きたいのですが、当の本人は遅刻することが頻繁になっており、先月は出勤しない日も何日か見られました。
今のところ、本部長として目立った成果は上がっていないようですが、今後の見込みはどうですか。
申し訳ございません・・・。来年度は、成果を上げるべく努めてます。
その割には遅刻も頻繁ですし、先月に至っては、何の届出もなく出勤しない日も何日かありましたね。
私は本部長として雇用されているので、成果が上がっていないことは申し訳ないですが、勤怠についてとやかく言われるのは違うのではないかと思います。
確かに労基法の管理監督者として採用していますから、出退勤についてある程度の裁量は認めますが、欠勤についてはさすがに賃金控除の対象です。年次有給休暇を充当して下さい。
私は、管理監督者として雇われていますから、労働時間の規制の対象外です。ですから、何時に出退勤するか、そして出勤するかどうかも自身で判断して構わないはずです。そうでなければ、管理監督者とはいえませんから、残業代や休日出勤手当の支払対象になりますよ。
Aさんはこのように主張していますが、果たしてどうなのでしょうか。
管理監督者の出退勤について
初めにご説明した、管理監督者の要件の一つである、「②自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること」については、タイムカードによる打刻や、出勤簿の作成・提出を義務づけること自体は、出退勤に関する裁量権を否定しないものの、欠勤・遅刻・早退の際には上司への届け出が必要である他、正当な事由がないと人事考課への反映や懲戒処分があり得る場合、出退勤に関する裁量権が否定され、そもそも管理監督者にあたらない、ということになり得ます(大阪地判昭62.3.31徳洲会事件 静岡地裁昭53.3.28静岡銀行事件)。
そうすると、遅刻・早退した場合に賃金控除をすれば、出退勤について厳格に管理されているとして、出退勤に関する裁量権が否定されることになりますから、管理監督者に対しては、遅刻・早退控除はできないと考えられます。
管理監督者でも就労の義務はある
では、今回の様に、管理監督者に対して欠勤控除を行うことも、出退勤に関する裁量権が否定されることになるのかが問題になります。
この点、管理監督者には「労働時間、休憩及び休日に関する規定」は適用されないものの、就労の義務については、「労働時間、休憩及び休日に関する規定」とは別問題であるため、管理監督者であっても、就労の義務が免除されているものではありません。これは、就労の義務を免除するという効果のある年次有給休暇に関する規定が、管理監督者にも適用されることからも明らかです。
また、そもそも部下を管理監督する立場にある者が、就労せずに部下の勤務を管理監督するのは不可能ですから、管理監督者であっても、就労の義務まで免除されているものではないと考えられます。であるからこそ、管理監督者であっても、欠務する場合には年休を取得するのであって、年休を取得せずに欠務した場合は、労務提供の義務を果たしていないため、ノーワーク・ノーペイの原則通り、欠勤控除を行うことが可能であると考えられます。
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