副業・兼業は就業規則で禁止できるか?
- 副業・兼業を禁止したり、違反者に懲戒処分を行うことは可能でしょうか?
- 就業規則に規定していたとしても、労働時間外の副業・兼業の全てを禁止するという規定の有効性は認めらず、就労禁止の有効性が認められる場合に限られます。
- 就業規則で副業・兼業を禁止できるか?
- 副業・兼業を禁止できる場合
- 無断で副業・兼業を行った場合
- 事例詳細
就業規則で副業・兼業を禁止できるか
- 労働時間以外の時間をどのように利用するかは、労働者の自由
- 労働時間外の副業・兼業全てを禁止するという規定の有効性は認められない
副業・兼業を禁止できる場合
- 会社の社会的信用や名誉を侵害する副業・兼業
- 競業会社での副業・兼業
- 労務提供に格別の支障を生じさせるような副業・兼業
無断で副業・兼業を行った場合
- 就業規則に禁止する旨の規定がある場合のみ懲戒処分の対象
- ただし、前記3つのケースが生じる場合に限られる
事例詳細
当社は、ITサービスを主とした20名程度の中小企業です。
昨今、政府は「働き方改革」として、社員の副業・兼業を原則容認する方針を示していることから、それを見た社員から、副業・兼業をしてよいのか、という質問をよく受けるようになりました。
社長! うちの会社給料安いんで、当社の休日に少しアルバイトをしたいと思います。
それはダメだ。当社就業規則では、副業・兼業は禁止と規定してあるじゃないか!
えっ、そうなんですか? でも、アルバイトや株、ネットオークション等いろいろやってる社員もいます。それは許されるんですか?
なに? それは誰と誰だ!? A君、この件については一度調査して、場合によっては、その社員に対し、処分を検討することにする。
さて、副業・兼業をすることについて、就業規則に禁止の旨を定めていれば、社員の副業・兼業を禁止することができるのでしょうか。
また、それに違反したことで懲戒処分の対象とすることが可能なのでしょうか。
就業規則で副業・兼業全てを禁止することは難しい
就業規則に、副業・兼業について禁止する旨を規定している企業は少なくありません。
しかし、本来、労働時間以外の時間をどのように利用するかは、労働者の自由であり、その時間の利用には、副業・兼業を営むことも含まれているといえます。
また、裁判所は、規定を限定解釈してその有効性を判断しますので、労働時間外の副業・兼業全てを禁止するという規定の有効性は認められないと考えます。
副業・兼業を禁止する規定への違反が、有効と判断される副業・兼業は、大きく区分すると以下のいずれかに該当する場合であると考えます。
- 会社の社会的信用や名誉を侵害するような副業・兼業(違法行為が行われていると思われる場所での就労、例でいうとキャッチバーや風俗店等)
- 競業会社での副業・兼業(副業・兼業が不正な競争に当たる場合や、企業秘密、営業機密漏えいの可能性がある場合等)
- 労務提供に格別の支障を生じさせるような副業・兼業(働き過ぎにより、人の生命、および健康を害する可能性がある場合等)
そして、裁判例をみると、就業規則に副業・兼業を禁止する規定が定められている主旨は、労働者の労務提供が不能、もしくは困難になることを防止したり、会社の企業秩序を乱されないようにすることにあり、夜間の長時間にわたるような副業・兼業等は、翌日の労務提供に悪影響を及ぼすことが明らかであり、就労禁止の有効性が認められると考えられます。
労務提供に重大な支障が生じているかどうか
次に、会社に無断で副業・兼業を行った場合、懲戒処分の対象となるかどうかについて、就業規則に禁止する旨の規定があり、その規定に違反した場合には、懲戒処分の対象になりえます。
しかし、前述の通り、労働時間以外の時間をどのように利用するかは、労働者の自由に委ねられる以上、たとえ就業規則に副業・兼業禁止の規定があったとしても、懲戒処分が行える場合は限定され、前記のケースが生じる場合に限られると考えます。
なお、副業・兼業禁止の規定がない場合は、そもそも懲戒処分を行うことができないということになります。
以上のことから、企業においては、本業に専念してもらいたいという思いや、企業秘密、営業機密の漏洩防止の観点から、副業・兼業については、禁止しておきたいというニーズが強いと思いますが、全ての副業・兼業に対し、禁止、および懲戒処分をすることは、現実的にはできないということになります。
なお、社会背景として、副業・兼業は、原則容認されていく傾向にありますが、上記の通り、全てを容認する必要はありませんので、労働者から副業・兼業の要望があった際には、労務提供上の支障や企業秘密の漏洩等がないか、また、長時間労働を招くものとなっていないか等確認する観点から、必ず、事前報告(許可・申請・届出等)をさせ判断し、副業・兼業を認める場合は、それにより、必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかを、個々に検討していく必要があると考えます。
服務規律について正しく定めておかないと、不要なトラブルに発展する可能性があります。
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