マタハラに対する最高裁判決は?
- 社員がマタハラの被害を訴えてくるといった事態に、会社はどう対処しておくべきなのでしょうか?
- 妊娠・出産等の不利益取り扱いの原則と例外を知り、以前にも増して慎重に対応する必要があるでしょう。
- 不利益取り扱いの原則
- 例外
- 事例詳細
不利益取り扱いの原則
- 妊娠・出産、育休等の事由の終了から1年以内に不利益取り扱いがなされた場合は、妊娠・出産、育児休業等の事由を「契機として」不利益取り扱いを行ったとされ、原則として法違反になる
例外
- 業務上の必要性から不利益取り扱いをせざるをえず、業務上の必要性が、当該不利益取り扱いにより受ける影響を上回ると認められる特段の事情が存在するとき
- 労働者が当該取り扱いに同意している場合で、有利な影響が不利な影響の内容や程度を上回り、事業主から適切に説明がなされる等、一般的な労働者なら同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき
事例詳細
妊娠、出産から職場復帰
当該病院の訪問リハビリ科に在籍している主任のAさんは、現在第一子を妊娠しています。
先日検診に行ったところ、医師から仕事を軽減する必要があるといわれたため、今後の働き方について所属長と話をすることになりました。
検診に行ったところ、担当医師から仕事を軽減するようにといわれました。状態についてはこちらの母性健康管理指導事項連絡カードに記載されている通りで、できれば外勤のない院内リハビリ科への異動と、短時間勤務への変更をお願いできないでしょうか。
分かりました。体が一番大切ですからね。それでは、人事部に話してみます。
所属長は人事部に掛け合い、Aさんの異動と短時間勤務への変更が決まりました。
異動と短時間勤務の件は医師の指示通りで対応することになりました。ただ、院内リハビリ科は主任がすでにいることと、Aさんの業務の軽減も考えて、主任を外れての勤務でお願いします。
分かりました。ご配慮ありがとうございます。育休明けからは、今まで通りの仕事をしますので、しばらくの間よろしくお願いします。
この職場復帰はマタハラに該当するか?
その後、Aさんは無事出産し、産休育休を経て、職場復帰することになりました。
来月から、元の訪問リハビリ科へ復帰です。勤務時間は短時間勤務を希望ですね。
はい、子どもが3歳になるまでは、短時間勤務でお願いしたいと思います。
分かりました。それでは、そのようにいたしましょう。フルタイムでは子育ても大変でしょうからね。
ところで、復帰後は主任に戻していただけるということでよろしいですか。
いいえ。Aさんの異動以降、訪問リハビリ科ではBさんが主任をしているので、Aさんは役職なしでの復帰となります。
えっ、そうなんですか! 主任としてまた仕事ができると思っていたのですが。主任でなければ、役職手当がないですよね。それは困ります。主任に戻してください。
残念ながら、今は主任のポストが空いていないので、復帰後は現状のままで仕事をしてもらうことになります。
最高裁判決では?
妊娠、出産、育児に係るトラブルは、最近増えてきているように思います。
2014年10月のマタハラに関する最高裁判決では、原職復帰について、以下のように述べられています。
軽易業務への転換が妊娠中のみの一時的な措置であることは明らかであることからすると、育児休業から復帰後の配置等が降格に該当し、不利益な取り扱いというべきか否かの判断に当たっては、妊娠中の軽易業務への転換後の職位等との比較で行うものではなく、軽易業務への転換前の職位等との比較で行うべき。
また、この判決を踏まえた妊娠・出産、育児休業等を理由とする不利益取り扱いに関する解釈通達によると、妊娠・出産、育休等の事由の終了から1年以内に不利益取り扱いがなされた場合は、妊娠・出産、育児休業等の事由を「契機として」不利益取り扱いを行ったとされ、下記2つの例外に該当する場合を除き、原則として法違反になると示しています。
例外(1)
「業務上の必要性から不利益取り扱いをせざるをえず、業務上の必要性が、当該不利益取り扱いにより受ける影響を上回ると認められる特段の事情が存在するとき」
例外(2)
「労働者が当該取り扱いに同意している場合で、有利な影響が不利な影響の内容や程度を上回り、事業主から適切に説明がなされる等、一般的な労働者なら同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき」
この解釈によって、従業員側は「契機として」不利益を受けたと証明するのみでよいということになりますので、会社側が上記2つの例外に該当するということを立証しない限り法違反となってしまいます。
今後は、妊娠・出産等に関するハラスメントの禁止について就業規則に規定し、従業員に周知することはもちろん、妊娠・出産等をした労働者に対しては、雇用管理上の措置を行う場合、それが法違反となる不利益取り扱いでないかどうか、以前にも増して慎重に対応する必要があるでしょう。
マタハラなどのハラスメントの禁止について正しく定めておかないと、不要なトラブルに発展する可能性があります。
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