暴力行為に対する会社の対応方法は?
- 社員がお客さまに暴力をふるった場合、懲戒解雇を科すことが相当なのでしょうか?
- 事案によりますが、就労時間中の行為であれば、重大な企業秩序違反があると判断されるか否かで判断します。
- 暴力・脅迫行為が就労時間中の場合
- 暴力・脅迫行為が企業外の場合
- 事例詳細
暴力・脅迫行為が就労時間中の場合
- 暴行・脅迫の動機、内容・態様、その他の従業員への影響などを総合的に考慮して判断する
- その上で、事案による重大な企業秩序違反があると判断される場合には懲戒解雇も考える
暴力・脅迫行為が企業外の場合
- 理論上は、必ずしも会社の社会的信用性を損なうものとはいえないことから、懲戒対象とはならない
- 事業活動の遂行に直接関連する、企業の社会的評価を低下させる、あるいは名誉や信用を損なうものに対しては、会社は従業員を懲戒し、秩序を回復する必要がある
事例詳細
当社は大手ITベンダーT社に、事業の大部分の仕事を回してもらっている下請け会社です。
先日、当社でシステムエンジニアとして勤務しているAが、T社の担当社員Bとの打ち合わせで口論になってしまい、そこからエスカレートして、Bの胸ぐらをつかむ等の暴力沙汰になりました。
Aは、Bが元請という立場をいいことに、毎回、理不尽な条件を提示するので、今回意見したところ、全く耳を傾けてもらえないばかりか、誹謗中傷を受けたため、そのような言動にいたったとのことです。
その後、Aは冷静になり、すぐに謝罪をしました。Bにケガはなかったものの、非常に怒って帰っていきました。
それを聞いた部長は社長に報告し、Aは翌日、部長と共に社長室に呼ばれました。
なんてことをしてくれたんだ! 君のせいで、T社から仕事を回してもらえなくなったり、さらに条件が悪化したらどうするつもりだ!これは懲戒解雇ものだぞっ。
しかし社長、Aは普段はとても真面目で、他の従業員からの信頼も厚い人物です。このような事は過去一度も起こしたことはありません。
だが、我が社にとっては、T社に対してそのような言動を行った事実は重いし、重大な就業規則違反として、懲戒解雇にも該当するじゃないか!
本当に申し訳ありません。今後二度とこのようなことは致しませんのでお許しを・・・。
社長・・・。Aもとても反省しておりますし、以前休暇中にケンカで警察沙汰になったCは、懲戒解雇にはならなかったじゃないですか。それを踏まえるとさすがにやりすぎではないでしょうか?
うるさい!! Cの件と今回の件はまた別の話だ!! Aの懲戒は免れないんだ!!
社長の怒りはおさまりません。さてAの処分はどうなるのでしょうか?
またCはなぜ警察沙汰にまでなったのに、懲戒解雇されなかったのでしょうか?
どんな影響が出るか?
事業場内や就労時間中に暴行・脅迫などをする従業員がいると、そこで働く従業員は恐怖心から、普段当然に発揮できるような能力を、発揮できない状態になってしまう可能性があります。
このような行為は懲戒事由に該当すると考えられます。
ただし、懲戒の程度については暴行・脅迫の動機、内容・態様、その他の従業員への影響などを総合的に考慮して判断され、その結果、事案による重大な企業秩序違反があると判断される場合には懲戒解雇も考えられます。
状況によって、対応方法も変わります。
今回のAの場合は、就労時間中ではありますが、以下の事情を考慮しますと、懲戒解雇とするのは重すぎると考えられます。
- Bが度々、理不尽な対応をAに行ってきたことが原因であること
- 激しい口論や、つかみ合う等の行為はあったが、Bはケガをしていないこと
- すぐに謝罪をしたこと
- 今までそのような行為は一度もなく、他の従業員への影響もそこまで大きくなかったこと
次に、Cについてですが、企業外での非行である暴行・脅迫行為については、犯罪行為ではありますが、必ずしも会社の社会的信用性を損なうものとはいえないことから、理論上は懲戒対象とはなりません。
しかし、従業員の企業外の行為であっても、事業活動の遂行に直接関連したり、企業の社会的評価を低下させる、もしくは名誉や信用を損なうものに対しては、企業には従業員を懲戒して、秩序を回復する必要があるといえます。
よって実務では、このような企業外での行為を理由として、懲戒解雇や諭旨解雇以外の懲戒処分であれば実施する場合もあります。
その程度については、その行為の態様・程度に加え、その対象となる従業員のこれまでの勤務態度・勤務成績、将来の期待度、上司・同僚からの評判、反省の姿勢をも考慮のうえで決定することになります。
注意・指導や懲戒処分について誤った対応をすると、不要なトラブルに発展する可能性があります。
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