就業規則の不利益変更の合理性
- 就業規則の不利益変更を行う際の合理性とは何ですか?
- 労働条件を不利益に変更することの「合理性」が問われますが、その判断は難しく、実務上は労働者に会社の経営状況等を説明し、個別に同意を取ることが必要です。
就業規則を不利益に変更する場合
就業規則の制定、変更については、労働者の同意は必要なく、過半数組合、あるいは過半数労働者の意見聴取を経て、実施することができます。
しかし、労働者にとって不利益な変更をする場合には、就業規則を変更することに加えて、対象労働者から書面による同意を取っておいた方が望ましいでしょう。
これについては、労働契約法第9条にも、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」と規定されているところです。
しかし一方、判例では「当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されない。」ともされています。(秋北バス事件最大判昭43.12.25)
就業規則の2つの合理性
そこで、この「合理性」とは何かが問題となります。
労働契約法では、就業規則に関する「合理性」について労働契約の締結時(第7条)と労働条件の変更時(第10条)に区分して規定しています。
第7条では、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」と規定されています。
ここでいう「合理性」とは、当該労働条件の内容自体の合理性です。
一方で、第10条は、既に労働契約を締結している労働者の労働条件の変更に関してですから、就業規則の変更によって、労働条件を変更することの「合理性」が問われます。
つまり、変更後の就業規則の内容自体は合理的であるように見えても、変更前の就業規則の内容と比較して、その変更が大幅なものであり、かつ急激であったりすると、就業規則を変更することについて、合理性があるかが問題とされることになります。
このように、就業規則に求められる「合理性」といっても、労働契約の締結時(第7条)と労働条件の変更時(第10条)に区分されています。
「合理性」とはどんなイメージ?
イメージとしては、労働条件の内容を1~10まで数値化したとして、1は無効レベル、4~6は中間レベル、10を最高レベルとして位置付けたときに、まず労働契約の締結時(第7条)を考えてみると、4~6であれば、その労働条件の内容自体は中間レベルであり、「合理性」があるものと考えられます。
一方で、労働条件の変更時(第10条)を考えてみると、仮に既存の労働条件が10の最高レベルであった場合に、これを4~6の中間レベルに引き下げるとすればそれが急激、かつ大幅な変更ということで、「合理性」は認められないと判断されることになります。したがって、労働条件の変更時(第10条)において「合理性」が認められるためには、既存の労働条件が10の最高レベルであった場合は、8~9程度への引き下げにとどめる必要があると考えられます。
実務上の留意点
しかし、就業規則の変更が功利的か否かを判断することは、実際には困難でしょう。
したがって、重要な労働条件を変更する際には特に、労働者から個別に同意書を取り付けることが必要です。
実際に裁判にまで発展することはまれですが、本人から同意書を取り付けていれば、同意を得て変更したと主張することができます。
また、本人から同意書を取り付けられなくても、他の多くの労働者からの同意書が取り付けられている状況であれば、その変更について合理性があると評価される要素となり、就業規則によって不利益に労働条件を変更する場合においても、合理性を高める要素のひとつとなるでしょう。
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