他人に業務を行わせた社員を懲戒できる?

社員が、会社と労働契約関係にない第三者に業務を行わせた場合、当該社員に懲戒処分を科すことはできるのでしょうか?
就業規則に定められている懲戒事由に該当するかどうかに加えて、当該行為や被処分者に関する情状(背景事情)を適切に斟酌した上で判断する必要があります。
労務問題一発解決バイブル無料購読

無料!経営者必見!
「労務問題、一発解決!」奇跡のバイブル
いますぐ会社を守る準備をしよう!

このコンテンツの目次
  • 労働契約とは
  • 懲戒処分を検討するとき
  • 事例詳細

労働契約とは

  • 労働契約とは、労働者が使用者に使用されて労働(労務提供)し、使用者が、これに対して賃金を支払うことを合意する契約のことをいう
  • 労働契約においては、使用者の承諾がない限りは、契約当事者自身が労務提供を行う必要がある

懲戒処分を検討するとき

  • 就業規則に定められている懲戒事由に該当しない限りは、懲戒処分を行うことができない
  • 当該行為や被処分者に関する情状(背景事情)を適切に斟酌した上で、懲戒の程度を判断する

社長を守る会の会員様を全力でサポートします!
社長を守る会
人事労務のお悩みは、今すぐ電話相談で即解決!
当サイトのすべての動画・マニュアルもオンラインで見放題!

事例詳細

当社は、都内で広告業を営む20名程度の中小企業です。新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言を受けて、感染症拡大防止の観点から、一部の従業員に対し、在宅勤務制度の導入を進めていました。

そして、定期の全体出社日のことです。

部長

Aさん、先日送ってくれた資料、素晴らしい出来だね。結構時間かかったでしょう? 一ヶ所だけ、今日中に修正をしてから、帰ってもらえないかな。

A社員

ありがとうございます。でも、すみません。今日中にはできないんです。

部長

えっ、どうしてだい? 一ヶ所だけだし、そんなに時間はかからなそうだけど・・・。

A社員

実は、結構仕事がたまっていて、ちょうど主人も在宅勤務だったので、お小遣い稼ぎに、全部やってもらったんです。

部長

なんだって!? 旦那さんとはいえ、勝手に、部外者にやってもらうのは、ダメに決まってるじゃないか。これは処分も含め、会社で審議することにするよ。

A社員

そんな!? 最終的には、私がチェックしましたし、出来がいいのであれば、会社にとっても結果オーライじゃないですか。

結果が出てれば過程は問題ない?

さて、Aさんとしては、結果的に会社から指示された仕事は達成しているので、その過程は問題にならないという主張ですが、このようなやり方は、どうなのでしょうか。

まず、労働契約とは、労働者が使用者に使用されて労働(労務提供)し、使用者が、これに対して賃金を支払うことを合意する契約のことをいい、使用者の承諾がない限りは、契約当事者である、Aさん自身が労務提供を行う、すなわち今回の場合は、Aさん自身が資料の作成を行う必要があります。

また、民法第625条2項では、「労働者は、使用者の承諾を得なければ、自己に代わって第三者を労働に従事させることができない。」と定められていますので、Aさんの自己判断で、ご主人に仕事の一部を行わせていたということは、当該条文にも違反することになります。

つまり、労働契約を締結している以上は、契約当事者であるAさん自身が、資料を作成することが、当然に求められているということになります。

なお、今回Aさんのように、仕事が完成するのであれば、その過程は問わないという考え方は、請負契約(民法第632条)であって、お小遣いを対価に、ご主人に資料の完成を求めることは、いわゆる下請けに該当することになります。

他人に業務を行わせたことで懲戒できる?

次に、労働契約上、当然にAさん自身が資料の作成をすることが求められているとしても、仕事の一部をAさんのご主人が手伝った場合に、懲戒処分の対象となるかというと、就業規則に定められている懲戒事由に該当しない限りは、懲戒処分を行うことができないことになります。(国労札幌支部事件 最高裁三小 昭54.10.30判決)

この点、一般的に、就業規則は、会社で一定の管理下において労務提供を行うことを前提に作成されますので「許可なく自己の業務を第三者にさせてはいけない」ということは、当然であり、直接的な記載はなされていないものと思いますが、前述の通り、労働契約上、当事者であるAさん自身が業務を行う必要があることから、職務専念義務に反していることや、会社の秘密情報を漏洩した可能性が高いことから、これらと就業規則(服務規律や懲戒事由等)をひも付け、懲戒処分を行うことは可能となります。

なお、懲戒処分を行う場合、当該行為や被処分者に関する情状(背景事情)を適切に斟酌した上で判断する必要がありますが、今回はAさんに悪質性がないことを踏まえると譴責・減給程度が妥当だと考えます。


懲戒処分について誤った対応をすると、不要なトラブルに発展する可能性があります。
懲戒処分の実務については、以下のセミナーで詳細を解説しています。
セミナー参加者特典として、無料個別相談で疑問点をすべて解消することもできます。


新!失敗しない「退職・解雇」の実務セミナー

新!失敗しない「退職・解雇」の実務セミナー

労使紛争解決を得意とする当事務所の経験とノウハウに基づき、中小企業の社長が、退職や解雇で大きな問題を抱えることなく、円満退職を実現するための方法を、リニューアルしたセミナーでわかりやすく伝授します。

新!失敗しない「退職・解雇」の実務セミナー

2025/03/07(金)受付開始 13:00 セミナー開始 13:30~17:30 空有  

オンライン動画 新!失敗しない「退職・解雇」の実務セミナーの視聴方法

社長を守る会の方は、「アンカー・ネット」会員マイページにログイン
するだけで、すべてのコンテンツを、購入することなくご利用になれます。


社長を守る会以外で会員マイページをお持ちの方は、
下のボタンからログインして、オンライン動画のご購入とご視聴が可能です。

会員ログインして購入

当サイトで初めてご購入される方会員マイページをお持ちでない方は、
最初に、下のボタンから無料会員登録を行ってください。

会員登録後、上のボタンまたは会員マイページ内からご購入いただけます。

新規会員登録して購入


労務問題一発解決バイブル無料購読

無料!経営者必見!
「労務問題、一発解決!」奇跡のバイブル
いますぐ会社を守る準備をしよう!

改正労働基準法レポート
労務問題解決のカテゴリー
面接・採用 配転・異動 退職・解雇
服務規律 ハラスメント 労働時間
年次有給休暇 賃金・退職金 健康問題
懲戒処分 損害賠償 労働条件変更
労働組合 福利厚生 その他