就業規則がない会社のデメリットとリスク

就業規則がない会社には、どのようなデメリットやリスクがありますか?
就業規則の作成は、労働基準法により会社に対して義務づけられており、作成していなければ労働基準法違反となります。
さらに、就業規則を作成して周知しておかなければ、会社と従業員との間にトラブルが発生したり、トラブル発生時に解決するためのルールがない等のリスクが生じてしまいます。
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就業規則はなぜ必要?

会社では、いろいろな人が働いています。従業員の価値観や考え方は、さまざまです。
しかし、会社では、収益を上げるという一つの目標に向かって、皆が邁進しなければなりません。
共通の目標を達成するためには、個々人の価値観や考え方はさて置いて、一定のルールが必要になります。

就業規則に記載するべきルールは、主に2つあります。服務規律と労働条件です。

ひとつ目の「服務規律」は、会社運営のために従業員が守るべきルールのことをいいます。
たとえば、当社の従業員としてあるべき姿を記載して、「服務規律に違反した場合には、懲戒処分を行う」などと定めておきます。

従業員が、周囲と協力して一つの目標を達成するために、企業秩序を維持して協調性を持って働くという統一的なルールを決めておくのです。

ふたつ目の「労働条件」は、記載するべき項目が労働基準法で定められています。
たとえば、始業・終業時刻などの労働時間に関すること、賃金の計算・支払い方法などの賃金に関すること、退職の事由や手続きなどの退職に関することです。
これらは、就業規則に絶対に記載しなければならない事項であり、就業規則の「絶対的必要記載事項」と呼ばれています。

その他、就業規則に記載する事項には、「相対的必要記載事項」「任意記載事項」があります。
相対的必要記載事項とは、定めをする場合には記載しなければいけない事項で、休職や懲戒が該当します。
任意記載事項は、会社が任意に記載できる事項で、経営理念や服務規律が該当します。

就業規則の機能の一つは、会社の労働条件の最低基準になることです。
これは、就業規則、労働基準法、個別の労働契約の関係性から説明できます。

もし、就業規則に定めた労働条件が労働基準法の基準を下回っていれば、労働基準法の基準まで引き上げられ、労働基準法の内容が適用されます。(労働基準法第13条)

(この法律違反の契約)
第13条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。
この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。

また、もし、就業規則を下回る内容の個別の労働契約を結んでも、個別の労働契約の内容は無効となり、就業規則の定めまで引き上げられるのです。(労働基準法第93条、労働契約法第12条)

(就業規則違反の労働契約)
第12条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。
この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

就業規則作成義務の根拠法は?

就業規則は、労働基準法第89条1項によって、会社に作成が義務づけられています。

(作成及び届出の義務)
第89条 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。

そして、就業規則の作成・届け出義務に違反した場合は、30万円以下の罰金という罰則が定められています。

第13章 罰則
第120条 第89条の規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処する。

労働基準法第89条1項の「常時10人以上」とは、常態として10人以上の労働者を使用しているという意味です。
この「労働者」は、雇用形態や期間の定めの有無は問いません。
そして、会社単位ではなく、事業場単位で在籍者数を数えます。事業場とは、原則、事業を行う一つの場所を指します。

また、作成・変更した就業規則を届け出る「行政官庁」とは、事業場を管轄する労働基準監督署のことです。
管轄の労働基準監督署の場所は、各地域の労働局のホームページで検索できます。

つまり、常時10人以上の労働者が在籍している事業場で、記載事項を網羅した就業規則を作成し、管轄の労働基準監督署に届け出ていなければ、労働基準法違反になってしまうのです。

就業規則がないことによるデメリットとリスク

デメリットは法違反と企業秩序を維持できないこと!

就業規則がないと、どのようなデメリットがあるのでしょうか?

就業規則がないことによるデメリットには、法違反になってしまうことと、企業秩序を維持できないという2つが挙げられます。

ひとつ目は、「就業規則作成義務の根拠法は?」に記載した通り、常時10人以上を使用する会社(正確には「事業場」)が就業規則を作成・届け出していなければ、労働基準法違反になってしまうことです。
労働基準監督署から監督官が臨検にきたら、是正勧告書が交付され、期日までに法違反を是正するよう指導されます。

ふたつ目は、企業秩序を維持するための施策が取れないことです。
「就業規則はなぜ必要?」に記載した通り、就業規則に記載するべきルールの一つが、服務規律と、服務規律に違反したときの懲戒処分についてです。

懲戒処分とは、服務規律などの企業秩序維持義務に違反した従業員に対し、企業の秩序・利益の維持を目的として会社が行う制裁罰をいいます。
制裁罰である懲戒処分を行うには、就業規則に根拠が必要とされています。

つまり、従業員の企業秩序維持義務に違反するような行為に対して、会社が何を行うかについては、あらかじめ就業規則に定めておかなければいけないのです。

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トラブル解決に時間やお金がかかってしまう!

これらのデメリットに加えて、就業規則がなければ、会社運営におけるリスクも生じてしまいます。
会社と従業員との間で、トラブルが発生し、解決に余計な時間やお金がかかるというリスクです。

とくに、就業規則がないことによるトラブルは、問題社員の退職時によく発生します。
就業規則がなければ、退職や解雇の手続きや賃金の計算方法があいまいなので、「『退職する』と言った、言わない」とか、「退職を強要された、解雇だ!」、「未払い残業代を支払え!」などと退職者から要求され、もめるケースが多々あります。

就業規則に定めた手続きを一つひとつ踏んでいれば、このようなトラブルが発生するリスクは、回避できるのです。
また、仮にトラブルが発生しても、就業規則の定めに立ち返って、会社と従業員との認識の齟齬を解消することによりトラブルを解決できます。

就業規則という統一的なルールがなければ、トラブルを解決する基準がないので、認識の齟齬を解消できる手段がなく、結局はお金で解決するしか方法がなくなってしまうのです。

就業規則を作成するときの注意点

入社誓約書と就業規則の周知が大切!

就業規則を、会社と従業員との約束事として機能させるためには、2つのことが必要です。

ひとつ目は、従業員の入社時に誓約書で同意を得ることです。
就業規則の内容に合理性があれば、誓約書における同意によって、就業規則が会社と従業員との労働契約の内容になります。

ふたつ目は、作成・変更した就業規則を、従業員に周知しておくことです。
就業規則の効力は、労働基準法第89条1項に定められた労働基準監督署への届け出だけでは生じず、従業員への周知をもってはじめて生じます。
従業員に周知していなければ、就業規則を作成・届け出していても、なんの意味もないのです。

就業規則の周知義務の根拠は、労働基準法第106条1項に定められています。

(法令等の周知義務)
第106条 使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。

ここでいう「その他の厚生労働省令で定める方法」とは、労働基準法施行規則第52条の2に定められています。

第52条の2 法第106条第1項の厚生労働省令で定める方法は、次に掲げる方法とする。

  • 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
  • 書面を労働者に交付すること。
  • 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

上記3つのいずれの方法であったとしても、就業規則が「従業員が必要なとき容易に確認できる状態にある」ことがポイントです。

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雇用形態別に就業規則を作成しよう

また、無期雇用・フルタイムで働く、いわゆる「正社員」とは異なる雇用形態の従業員がいれば、正社員就業規則とは別に就業規則を作成しておくことが重要です。
たとえば、働く時間が短いパートタイマーや雇用契約期間が有期である契約社員は、「パートタイマー就業規則」や「契約社員就業規則」など、正社員就業規則とは分けて規定を整備しておきます。

雇用形態によって労働条件は異なっているはずですから、適用される就業規則も別々に作成するべきです。
正社員とは異なる雇用形態の従業員がいるのに、一つの就業規則しか作成していなければ、パートタイマーや契約社員など、いわゆる非正規社員ともめたときに正社員用の就業規則が適用されると判断されかねません。

「就業規則の適用範囲」でも解説している通り、同一労働同一賃金の議論に巻き込まれないためにも、雇用形態別に職務の内容や人事異動の範囲等を整理して労働条件を決定し、就業規則を作成するようにしましょう。

正社員就業規則に「非正規社員用の就業規則は別に定める」などと規定したにもかかわらず、非正規社員用の就業規則を作成していなければ、法的にも第89条1項に違反してしまいます。

就業規則がない会社はどうなる?

就業規則を作成していなければ、労働基準法違反となります。
それだけでなく、就業規則で決めておくべき事項を定めていなければ、残念にも、従業員ともめて争いになってしまいます。

とくに、休職・復職、退職や懲戒に関する規定が、もめる原因になります。

たとえば、就業規則に定めた復職条件について、争いになった事例があります。
ある従業員が休職中、会社が就業規則の復職条件を変更しました。変更後の復職条件にもとづき、当該従業員は退職扱いにされました。
しかし、その変更は当該休職者の復職条件には適用されないので、休職期間満了による退職は無効だと判断され、会社には賃金を支払えと命じられました。

本件変更により追加された就業規則の復職条件は、従来規定されていない「健康時と同様」の業務遂行が可能であることを、療養休職した業務外傷病者の復職の条件として追加するものであって、労働条件の不利益変更に当たることは明らかであり、さらにその不利益の程度は大きいものである一方で、本件変更の必要性およびその内容の相当性を認めるに足りる事情は見当たらないことからすれば、本件変更が合理的なものということはできない。

他には、あらかじめ就業規則を整備せずに行った懲戒解雇が無効とされ、会社に賃金を支払えと命じられた事例もあります。

使用者が労働者に対し、労働契約に基づいて当然に懲戒処分権を有すると解することはできず、使用者が労働者に対して懲戒処分をするためには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要し、また、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずるためには、その内容の適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続きが取られていることを要する。

これらの事例のように、トラブルが起きてから就業規則を整備しても、そのトラブル解決のためには役にたちません
トラブルが起きる前に、あらかじめ就業規則の内容を整備して、作成しておかなくてはならないのです。

失敗しない就業規則の作り方

就業規則の作成方法は、企業経営理念や経営方針にもとづいて条文を作成し、労働基準監督署に届け出て、従業員に周知するという流れで行います。

雇用形態別に労働条件を整理して、「絶対的必要記載事項」、「相対的必要記載事項」、「任意記載事項」を記載し、それらが労働基準法に違反していないか確認します。
就業規則を作成したら、従業員代表に聴いた意見を記載した意見書を作成して、労働基準監督署に届け出します。
労基署への届け出だけで満足せず、作成した就業規則は、従業員に周知しておくことが大切です。

就業規則の条文の中では、休職・復職や労働時間、賃金についてはトラブルに発展しやすく、とくに注意が必要です。
これらは、退職者からの「不当な解雇だ」とか「未払い残業代を支払え」といった要求にかかわってきます。

きちんと就業規則を作成していなければ、こうしたトラブルの解決のために、余計な時間やお金を費やさなければなりません。

書店には就業規則に関する書籍がありますし、また、たくさんのセミナーも開催されていますので、参考にするとよいでしょう。


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就業規則作成の実績が豊富な弁護士や社会保険労務士などの専門家に依頼するのも一つの方法です。
就業規則作成にかかわる法律は、労働基準法、労働安全衛生法、パート・有期雇用労働法、高年齢者雇用安定法、育児介護休業法などなど多岐にわたっており、自社の担当者だけで作成・整備するのは、なかなか難しいと思います。

せっかく就業規則を作成しても、気がつかないうちに、これらの法律に違反する内容を定めていれば、従業員とトラブルになったときその就業規則は意味をなさないのです。
実績豊富な専門家であれば、すぐに変更するべき条文はどれか、的確な指摘を受けられるでしょう。

就業規則の詳しい作成方法は、「就業規則の作成・変更や届け出・周知の方法」でも解説していますので、参考にしてください。


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